歯茎の移植でへこみを改善し、前歯にインプラントを入れたケース
歯茎のへこみを治したい方必見
歯茎のへこみが審美性を悪くしている
【年齢】42歳
【来院理由】歯を抜く事になったが凹まないように直して欲しい 前歯を綺麗に治したい
【処置】抜歯、ソケットプリザベーション、コネクテッブティッシュグラフト、ジルコニアブリッジset
【費用】100万円
今日もインプラントについて書いていきます。
インプラント治療に詳しくなりたい⓶で書いていた正しいインプラントについてです。
正しいインプラント治療が良い結果になる・・当たり前のことですね。
何が正しいインプラント治療なのでしょうか?
コラムインプラント治療に詳しくなりたい⓶でも少し触れましたがインプラントを少しでも長持ちさせたいですよね。
インプラントが長持ちするには以下の3つの要件が大切です。ここで言う長持ちとは15年以上のことを指します。
1:インプラントの部品が壊れない・ネジが緩まない
この要件を満たすものは2つです。 :インプラント材料自体の品質が良い・:インプラントを打つ歯科医師の技術
:インプラント材料自体の品質が良いことは簡単に調べがつきます。問い合わせれば良いのです。ほとんどの歯科医院は海外メーカの有名ブランドを使用してます。通常は有名ブランドであれば品質に問題ありません。簡単には壊れないのです。危険なのは個人作成の自社製インプラントや安物コピー商品インプラントは危険です。そもそもそういう不適切なインプラントを大切な患者様の体に打ってもいいやという発想自体が無責任な歯科医師です。気をつけましょう。やはりインチキ商品はインプラントの強度が弱く壊れたりするトラブルが絶えません。
:インプラントを打つ歯科医師の技術を判断するのは難しいです。この技術というのはインプラントを骨に打つ際に歯と平行に真っ直ぐ打つ必要があります。専門的にいうと咬合平面に対して軸方向に垂直に打つということです。この大切な条件を満たさずに斜めに打ったり曲がって打つと噛んだ際インプラントの部品に余計な力がかかり破折したり、ネジが緩むといった原因になります。多少は斜めでも大丈夫ですができるだけインプラントが壊れるようなリスクを減らすためにも真っ直ぐインプラントを打つべきです。長期的な安定を目指すならなおさらこだわりたい大切な条件です。写真のインプラントは歯に対して真っ直ぐ入ってます。このように打つべきです。
2:インプラントが感染しない環境が整っている
Aさんの実体験から考えてみましょう
2019年夏 手術により無事一本のインプラントが下アゴの骨の中に入りました。3ヶ月後、骨もインプラントとくっついたようです。それから、セラミックスの綺麗な歯も入れてもらいました。よく噛めるし、痛くも・腫れもないこれで安心!!と思いきや、インプラントを入れてから僅か2年後、歯茎が腫れてきてしまった。主治医先生はインプラント部のレントゲンを撮り、『インプラントの部品は壊れてないですね、どうやらインプラントが歯周病感染してるようだ』といいます。しかも、私のインプラント部の歯ブラシが悪いという・・・まあ確かに面倒であまり磨かない日はあったけどほとんど毎日しっかり磨いていたし私のせいなのかな??定期メインテナンスも通っていたし。確かにインプラント部歯茎は凹んでいて食べかすが詰まりやすかったけどなぜなんだろ?やっぱりインプラントは噂どうりダメだなーブリッジにすればよかった・・・
こんな話はよく耳にしますし、ネット相談ではよくありそうな内容です。歯茎が腫れた理由を考えてみましょう。実際の患者様の口のなかを見ていないので憶測になりますが、歯茎の腫れはインプラント部の感染で間違いなさそうです。この場合あたかもAさんのインプラント部の管理の悪さが原因のように見えますが実は違います。歯科医師の責任です。題名にインプラントが感染しない環境が整っていると書いている通り感染しないインプラントの環境を整えるのはインプラント治療をする主治医の責務です。具体的には簡単です。
インプラントは歯を何らかの理由で抜いて(抜かれてて)インプラントを打ちます。しかし、歯を抜いた歯茎は骨とともに5ヶ月ほどでどんどん吸収(しぼむ)してしまいます。過去のコラムを読んでくださっている方は知っていますね。歯茎も骨も凹んでしまったところにインプラントを打っても吸収した歯茎は凹んだままです。下の写真の青丸のような凹みです。上に偽物の歯が乗っていますが、大きくくぼんでいますね。この二枚の写真は他院インプラント後の写真ですが、見た目が悪く食べかすが詰まりやすい形をしてます。
下の写真の口の歯もボロボロですね。歯がないところを見てみてください。大きく凹んでますよね。この凹みも歯を抜いたことで起こる結果です。これは必ず起こります。この大きく凹んだ状態にインプラントを打ちますと(打つことは可能)結果的にインプラントを守るべく必要な歯茎の厚みが足りないことになりますし、見た目も悪いです。インプラントが感染しない環境が整っている必要がありますからこの凹みを少しでも元に戻した方がいいわけです。元に戻すとは歯茎の移植などが必要になります。
歯茎の移植は下の写真のような手術です。この写真はインプラント治療部に歯茎の移植を施している手術中の写真です。白い糸に繋がれているピンセットでつままれているピンク色
の塊が移植中の歯茎です。お口の一部から切り取ってきてます。(全然痛くはないです)このように歯茎の移植を経てインプラント周囲の歯茎の厚みを改善することでインプラントを感染から守ることができますし、食べかすが詰まりやすいインプラントではなく自然な本物の歯のように改善できます。歯茎の厚みはインプラントを感染から守る役目を果たします。
以下の二枚の写真は同じ写真を並べてます。前歯のインプラントですが凹みもなく美しいですよね。パッと見ただけではどの部位がインプラントに置き換わっているかわかりません。(左の写真青丸がインプラントの歯)凹みが移植により完全に治っています。
これならば食べかすも入り込みませんし、歯茎の厚みが十分あるので簡単に歯周病感染は起こりません。より安全で強い環境になるわけです。
下の写真のケースは奥歯のインプラント(銀歯ではなく白い歯)です。自分の歯のようにみえますがこれもインプラントです。歯茎の凹みもなく食べかすも詰まりにくい形をしています。
これで歯茎の厚みは感染からインプラントを守ることや清潔度を保つ・見た目の良さには重要だとわかっていただけましたでしょうか?手術自体は簡便なのでインプラント治療時には主治医に確認し、必要であれば施術してもらってください。この歯茎の厚み改善はとても重要です。インプラント周囲の歯周病から自分の大切なインプラントを守りましょう。この技術や知識があるなしでも主治医の技術や知識を知ることができますね。
3:噛み合わせが正しく調整されている
インプラント治療をする最大の目的はご飯を美味しく食べれるように改善することです。インプラント治療が終わっても噛み合わせが悪ければ意味がありませんね。インプラントを長持ちさせるのになぜ噛み合わせが大切なんでしょうか?インプラントには継続的・永続的にご飯を噛むという(60kg以上とも言われるものすごい力)強い力がインプラントにかかり続けます。15年を超えるとなればそれはものすごい回数、力がかかるわけです。それではいつか壊れてしまいます。
できる限りインプラントには負担がかかりにく力であって欲しいわけです。インプラントの弱点である中ネジに負担がかかりにくい力です。それには精密な噛み合わせを作る歯科技工技術と主治医の微調整が欠かせません。定期検診でも噛み合わせは必ずチェックしてもらってください。人の噛み合わせは経時的に必ず変化します。インプラントに破損につながる過剰な負担がかかるようなことがないように噛み合わせの確認をしてもらいましょう。定期検診で主治医が噛み合わせを確認してくれないなんてありえません。そのような手抜きがインプラントの長期的安定の綻びとなります。
1:インプラントの部品が壊れない・ネジが緩まない
2:インプラントが感染しない環境が整っている
3:噛み合わせが正しく調整されている
以上3つの原則を守ることでインプラントの長期的安定が期待できるわけです。これからインプラントをする患者様もすでにインプラント治療が終わっている患者様も気にしてみてください。インプラント治療の様々な悩みがあれば当院で解決できるかもしれません。毎週多くの先生が治療見学に来てくださり共に研鑽しております。何かしらお力になれたらいいですね。
次回もインプラントについて語っていきます。
執筆者情報
院長/歯科医師
中澤 玲 Rei Nakazawa
岩手医科大学歯学部を卒業した後、すぐに顎関節治療の勉強に没頭し、 多面的な目線で顎関節の治療を行う。 その後、アメリカ・ボストン大学に留学し、世界で注目される治療や歯科材料に目を向け研鑽し、審美治療やインプラント治療においては、ドイツ大手のインプラント会社のインターナショナルインプラントインストラクターに任命され、活躍している。
日本インプラント学会、ブラジル審美治療学会論文投稿や歯科雑誌への執筆、2013、2014年とブラジル審美治療Marcelo Daltro先生を個人的に日本に招聘し共同で講演活動を行う。インプラントの本場ドイツでもFrank Zastrow先生と講演活動を行っている。 2014年はドイツのインプラント専門医達の間では解消されていない問題である『顎関節症とインプラント治療』についての講演を行った。
世界でも著名な審美治療医師の一人、Dr.Iñaki Gamborenaと共同講演を日本GC社で開催。高水準のディスカッションにより多数の賞賛を得た。自身でも若手歯科医師向け年間コースを2014年に開設し、日本国内でも各地で講演中。