インプラント治療に詳しくなりたい④ インプラントの失敗・弱点とは
インプラントの失敗・弱点についてです。
歯科用インプラントは以前のコラムでも触れていますが顎骨の中にチタンのネジを植え込む治療です。
植え込まれたインプラントが太く・長く・高い強度があればあるほど 噛む という強い力に抵抗します。
強い力でかんでも壊れないし、取れたり、グラグラしません。じゃあなぜインターネット上ではインプラントの失敗・危ない・やらない といった言葉が並んでいるのでしょうか?歯科医師が太くて強くて長いインプラントを打てばいいだけの話のはずです。
インプラントの失敗談はネット上で散見されますが大切なのはどんな失敗であったかです。
以下によく見る失敗とその対処法を記載しておきます。
1. 前歯を失った又は先天的に無い部位にインプラントを打ったが自然感が無く見た目が悪い。審美的では無い。
原因 インプラントの3次元的ポジションが悪い (インプラントの入っている場所が良くない)
対処 インプラントを抜きとり骨造成からやり直し、インプラントが3次元的に良い場所に打ち直す必要があります。欠点は大規模な外科手術が必要になり何度かに分けてGBRやCTGが必要になる事です。期間・通院回数・費用 全てがかかる為大変負担が大きくなります。
インプラントを抜き取らない場合は1度現状のクラウンをはずしアバットメントも外す必要がある場合が多いです。一旦全て外してからCTGやGBRを行い歯肉の厚みを改善、そうする事でインプラントのクラウンに自然感を少しでも持たせる事ができる様になります。(症例ブログ記事の失敗インプラントリカバリー参照)しかしながら限界があり素晴らしい改善にはなりがたい為1番最初にインプラントを打つ先生が1番大切であるといいきれます。また、インプラント上部構であるクラウンを作る技工士も大切でインプラントを打つ歯科医は3次元的に適切に行いクラウンを任せられる技工士は審美的なクラウンを作製できる優れたチームだけが審美エリアのインプラント治療が可能になります。
2.インプラントの部位で噛むと痛い
原因 まずハッキリさせたい事はインプラント部で噛むと痛い・叩くと痛いという事はありません。インプラントは骨と結合しています。噛むと痛いインプラントはインプラントと骨との結合が外れているかアバットメントのネジが緩んでいるかどちらかしかありません。骨の結合が失われているのは前述のインプラントの3次元的ポジションが悪いのが最大の原因で他には噛む力や食い縛りがとても強いため壊される事が多いようです。
対処 インプラントが骨との結合が外れていた場合インプラント除去が第一選択になります。1度でも結合がとれた場合は新しいインプラントを入れない限り再生することは難しいです。(もちろん状況によっては再生もあり得ますが難しいです) インプラントを再度
植え直す場合、周囲が大きく損なわれているのでGBRする必要があります。それもまたとても大変です。
3.インプラントの部品(アバットメント)が破損している
原因 経年的に噛んだり食い縛ったりして強いストレスがかかり部品が破折することがあります。ネジが緩んでいるだけの事もあります。
対処 部品を交換したり ネジを締め直すだけで解決します。部品が彼折したりネジが緩みにくいメーカー (高品質)を主治医が選択しているか確認した方がいいです。残念ながら安い早い簡単を謳う歯科医師は高品質のメーカーを使用してない事が多いです。高品質メーカーは金額が高いです。良いメーカーのインプラントを入れてもらうだけでトラブルが減らせます。
4.インプラントがインプラント周囲炎と呼ばれる歯周病にかかってしまった
原因 大きく3つあります。
aインプラントを入れたが正しい清掃をしていなかった または清掃しにくいクラウンを入れられてしまった。
b術者が3次元的に適切な位置にインプラントを打ってくれなかった。位置不良から清掃が困難になり結果的にインプラント周囲炎になった。
c知らない間に部品が破折またはネジが緩んでいた。結果的にインプラント周囲にバクテリアが侵入定着しインプラント周囲炎になった。
対処法 とにかく主治医が3次元的にインプラントを良い場所に打つこれが一番大切です。
これが出来る先生は使用するインプラントも安物では無く一流メーカーを使用しています。
まとめ
今回はざっくりと患者さん向けに簡単な内容でインプラントの失敗を説明しました。しっかりと読んで頂いたらわかる様にインプラントを3次元的に適切な位置に打つ事がいかに大切かわかると思います。レントゲン写真をみてあれ?こんな斜めでいいの?など不安に感じる場合はセカンドオピニオンに頼ってみてください。特に審美インプラントは難易度が高いです。誰でも良い結果を出せるものではありません。歯科技工士・歯科医師・クリニックスタッフ・インプラントメーカー全てがハイレベルである必要があります。
執筆者情報
院長/歯科医師
中澤 玲 Rei Nakazawa
岩手医科大学歯学部を卒業した後、すぐに顎関節治療の勉強に没頭し、 多面的な目線で顎関節の治療を行う。 その後、アメリカ・ボストン大学に留学し、世界で注目される治療や歯科材料に目を向け研鑽し、審美治療やインプラント治療においては、ドイツ大手のインプラント会社のインターナショナルインプラントインストラクターに任命され、活躍している。
日本インプラント学会、ブラジル審美治療学会論文投稿や歯科雑誌への執筆、2013、2014年とブラジル審美治療Marcelo Daltro先生を個人的に日本に招聘し共同で講演活動を行う。インプラントの本場ドイツでもFrank Zastrow先生と講演活動を行っている。 2014年はドイツのインプラント専門医達の間では解消されていない問題である『顎関節症とインプラント治療』についての講演を行った。
世界でも著名な審美治療医師の一人、Dr.Iñaki Gamborenaと共同講演を日本GC社で開催。高水準のディスカッションにより多数の賞賛を得た。自身でも若手歯科医師向け年間コースを2014年に開設し、日本国内でも各地で講演中。